2008年08月31日

アルフォンスノート











今回、シリーズで2点、銅版画をアクリル凹版で制作するに当たって、過去に感じたアクリル凹版の問題点のソリューションを見つけるために、経過を記録してみました。

以下の3点が、特に今回留意した点です。

1.描画の際の線の崩れやすさ。
2.アクアチントのムラや粒子の粗さ。
3.線の重ねづらさ。


各項目について、一応の反省点と対策をを考えてみました。

1.線の崩れやすさ
これは常に感じてきた問題です。どうも、線がパリパリ割れてしまいやすい気がしていました。対策としては:

・ニードルをシャープに研いで描画する。
 鈍いニードルでがりがり削ると、余計に線が崩れる。ニードルをよく手入れすれば、線がこわれにくい。

・水性グランドは手早く、薄く塗る。
 ヌリムラや厚すぎは、割れやすくなる原因のようでした。

2.アクアチントのムラや、粒子の粗さ

・ドバッとエアスプレイでアクアチントをかけるのでなく、すこし版から放して、少しづつ段階を見て版への付着具合をチェックしながら噴射するようにする。

・アクアチント前には、特に丁寧に版を中和しておく。

3.線の重ねづらさ(線の太り)
ノントクシックの理念は、硝酸を使わない事。でも、塩化第二鉄は線が太りやすくちょっと線がごつくなる傾向が。そして水性グランドだと、どうしても2回目、3回目の腐食の時に、前に腐食した線に塩鉄が入り込んで線が益々太くなる。中々解決しづらい問題ですが、今回以下の方法を取り入れて、状況を改善しました。

・ニードルをよく研いで描画を行う(描画の時点で線が割れないようにする)。

・事前に下絵の段階で進行計画を立て、なるべく一度にまとめて描線し、アクアチントも順序だてて一気に行う。

・塩化第二鉄に漬けて数秒で取り出し、防蝕に問題がないか確認してから腐食を進行させる。漬けっぱなしにしない。


まだ、普及して数年のNon-toxic printmaking、まだ不完全な部分も多く、常に問題に振り回されている感があるワタクシですが、今回は既にコンペを逃してしまい、時間に余裕があるので、少し技術面の課題に留意してみました。
今まで何人ものテクニシャンが改良に改良を重ねて、各工房のスタイルを確立していっている段階ですが、あのアルフォンス(エディンバラのベテランテクニシャンで、工房の主)ですら「いい黒二スの作り方があったら、教えて」と工房に張り紙をしている位、完璧にするにはなかなか時間と苦労がいるようです。

・経過を見ながら
・余裕を持って
・計画的に丁寧に作業を進める

という事に留意するだけでも、かなり状況改善できます。

まだ刷ってみないと判りませんが、今回の製版はこれで結構スムーズに酢取れるが少なく進んだ気がします。

もうすこしなれたら、材料のレシピも自分で研究していこうと思います。


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(08:05)

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